ダイアナ・ヘンドリー著、田中薫子訳『魔法使いの卵』(2001年、徳間書店)


一人前の魔法使いになるための試験を間近に控えた少年スカリーと一家のお話。魔法使いになる人間とフツウ人間が存在している世界なので、スカリーの一家が魔法使いであることは、他のみんなには秘密——ということで、色々苦労しています。本当は結構大きなものが背後にあるストーリーなのだけれど、そういうものを感じさせないストーリーです。そもそも長さ(というか短さ)が長さなのであっというまに読めるし、読後感も爽やか。忙しい日常のひとやすみ、というのにぴったりな感じです。


佐竹美保さんの挿絵がストーリーに合っていて、それも楽しめます。特に、なんとなく頼りない感じのするスカリーがかわいい! 学校の成績が芳しくないためにスカリーの「お守り(おそらく原書タイトルにもなっている"minder")」としてやってきたモニカが、謎めいているけれど「かっこいい」感じで、私にもこんな人がついていればなあ、などと思ってしまいました。