ジョン・ベレアーズ著、三辺律子訳『魔法の指輪』(2002年、アーティストハウス)


夏休み後の新学期には中学生になるローズ・リタは、女の子らしくしなければならないことに不安と怒りの混じった感情を抱いていました。おまけに、親友のルイスはボーイスカウトのキャンプでいなくなってしまうのも不満でした。そんな彼女を、魔女のツィンマーマン夫人はミシガンへの旅行に誘います。変わり者のいとこが遺した農場を見に行くのが目的です。彼は魔法の指輪を見つけたと言っていました。そして農場に着いた2人に、不思議な出来事が次々に起こります。


誰(何)が不思議な出来事の原因になっているかは分かっているのですが、簡単に事件の真相には到達できません。前作『闇にひそむ影』では、自分の欠点を克服したくて、コインの魔法に魅せられたのはルイスでした。今回は、将来に不安を抱えるローズ・リタが、魔法の力に心を奪われそうになります。しかもそれは、困難を乗り越えたと思われたところです。ファンタジーとしての面白さだけでなく、そういう思春期の漠然とした不安もよく描かれていると思いました。